食の旬暦

余市ワイナリー訪問記(5)
ドメーヌ タカヒコ

今年で4年目を迎える「余市町感謝祭」。
2023年も、余市町のワイン産業そして余市町というまちを応援してくださっている寄附者のみなさまへ感謝の気持ちを込めて素晴らしいワインセットをご用意いたします。
「余市町のために」と、ご協力いただく、造り手のみなさんからお話を伺いました。

本州でワイン造りをしたからこそ感じる余市町の魅力とは

曽我 貴彦さんは長野県小布施市で生まれ。ココ・ファーム・ワイナリーの農場長として務めた後、2009年に余市町でワイナリーを開設しました。
なぜ、余市町だったのかを語ってくれました。「やっぱり気候ですよね。僕たちの憧れるフランス ブルゴーニュ、シャンパーニュのような涼しいエリアと、温度帯が非常に似てる。 世界含め、標高の高いところは寒すぎてブドウが冬を越せないけど、パウダースノーの雪が役目になって越冬できるというところが最大の魅力。あと雨は少ないわけではないけど、対策をしなくても雨と対峙できるっていうのも良さじゃないでしょうか。」

想定以上の気候変動、今年の畑の状況について

「暑さは想定してましたが、湿度は想定を超えてましたね。本州にいた頃と変わらないです。僕たちは有機栽培でブドウを育てているので、ある程度気候が安定すれば、虫含めて病気など防げるんですけど、これだけの気候変動で想定以上の段階になると、いつも通りにやっていくと大失敗するなと。来年は今まで通りとは違うことも考えていかなきゃいけないのかなと思ってます。少しなめてましたね、あたたかくなってるのは非常に意識はしてたんですけども。」

気候変動によって味わいも変わってくる。

「ピノノワールに関しては、もう少し暖かくなっても生育は問題ないとは思うんですけれど、味のスタイルは変わってきています。それはいいか悪いかっていうのはまた消費者次第ですが、果実味は増してきている。うちの昔のスタイルであるスパイシーさや、キノコ的な感覚よりも、ある意味ブルゴーニュ、ニューワールドも含めてそっちの味わいに近づいている感じですね。」
「果実味は強すぎない方が個人的にはいいんじゃないかなとは思ってるんですけど、今飲んでみると 意外に果実味があっても、お寿司と合わせても美味しく馴染んでるんで 。今のところ逆に複雑さの要因として許容の範囲かな。」

日本の味、地域の風土の味をそのまま楽しめる「ワイン」

「世界の人たちよりも、僕たち日本人は有機栽培に向いてると個人的に考えています。環境や健康というよりも、美味しさが大きな目的ですね。おいしいものを作るには土が大切で、いい土ができれば、農産物に香りや、味わいもぎゅっと詰まって、旨味やお出汁味感が現れると個人的に考えています。日本の味、この地域の風土の味っていうのは、雨の降る国、湿度もあり自然豊かな国であるからこそ有機栽培っていうことにトライすることに意味があると思います。」

発酵に対する考え方も伺いました。

「ワインは、他のお酒と違って殺菌しないで発酵させる、畑から菌を持ち込めるという珍しい発酵食品ですよね。自然界からの全てをタンクの中に持ち込める、そういうことを考えるとやはりあまり化学肥料を与えたブドウを使ってだと作りづらい。日本は発酵微生物に関しては非常に恵まれてる国であり、有機栽培する意味っていうのはやはりすごくあるし、世界から見ても面白いと感じてもらえる。複雑さ、多様性、不均一的な美しさというものを表現できると考えています。」

ワインが地域と人をつなげていく

「個人的には、この余市町で小さなワイナリーやブドウ農家さんがたくさん増えて欲しいと思っています。共通の味わいが成り立ってくると、それは地域にとって強い力になると思います。

地域の味・日本の味、そこでしかできない味を僕たちが余市でワインを造って、海外の人たちが面白く思ってくれて、余市じゃないと造れないねと言われるような、日本でしか表現できない味が余市町の宣伝にもなるんじゃないかな。」

ワイン造りを通して、余市町の未来も考えているタカヒコさん。

「ワインというのは不思議なもので、世界の人たちが 興味を持ってくれます。そしてワインを通じて、世界の人たちが余市を見てくれる。さらに世界の人たちが面白いというと、日本の人たちも注目してくれる可能性も十分あります。そんな形で化学反応が起きて、良い形で余市が元気になってもらえたら。」

余市らしいワインツーリズムも

「ワイン業界だけじゃなく、ワインを通じていろんな産業が元気よくなってくる突破口っていうものを作っていかなきゃいけないなと。ツーリズムもいろんな形があって、僕たちみたいな小さい生産者の最大の欠点は、観光客の受け口が小さいこと。僕たちはブルゴーニュへ行くと、ブドウ畑で写真を撮って、写真を見ながら、街のレストランで飲んで楽しみますよね。その方が地域のプラスになる。町を含めてブランディングをこれからしていかないといけないですね。」

今年、ナナツモリの畑を見渡せる展望台と、入り口に石の堀が完成した。
「例えば、こういう石の塀や展望台を作るだけでも、みんなは写真を撮りに回ってくれるんじゃないかなと。目的があればそこに多分ワインツーリズムが成り立つような気がします。」

ナナツモリの畑を見渡せる展望台
石の堀はナナツモリの文字
ワイン生産者のご紹介

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「余市町感謝祭 2023」は2023年11月23日(木祝)より開催します。
情報公開まで今しばらくお待ちください。

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